お灸と粗食とウォーキングな日々
ようやく妊娠9ヵ月になり、会社も退職し、ゆっくりとした時間を過ごす日々になった。

助産院には毎週のように通い、診察を受けたり、お灸の指導を受けたり、リラックス法や出産までの流れを学んだ。

あと、助産院は病院ではないので、助産院が紹介する産婦人科病院へ2週間に1回通わなくてはいけないが、その病院も大正ロマン病院のような感じの病院で好感が持てた。
先生も、キャップを被りTシャツ姿という今にも釣りに行って来ま〜すといった感じの格好だったが、診察も丁寧で嫌ではなかった。

家ではお灸の指導を受けた後に購入したお灸を安産のツボと呼ばれる部分(両足首の内側にある)に当てて、キッチンの換気扇の下に座りすえる。

あぐらをかいてお灸をすえるその姿は、はたから見たら修行僧のようでちょっと怖いと思う。

体重が増え過ぎたこともあり(この時すでに12kg増えていた・・)、今まで洋食ばかりを好んで食べていたが、助産院で指導された和食中心の粗食を食していた。

夜は、ダンナ様のことを考えて肉料理を作っていたが、ほとんど肉には手を出さず、私は別で納豆やひじきを食べていた。それでも、体重は一向に増え続けていたけど。・・・食後のアイスか?

体力もつけないと出産での疲労がひどいと言われ、ぐるぐると町内を大きなお腹でエッホエッホとウォーキング。

冷えは体にも赤ちゃんにも悪いと言われ、レッグウォーマーに厚手の靴下を履き、セーターを着込み、中にはババシャツを着て外に出る。
階段を必死にヒーヒー言いながら上り下りした。

妊娠する前より、妊婦になってからの方がハードな運動をしていた。

この頃には、お腹の赤ちゃんも活発な運動をしていて、私の腹はしょっちゅう歪んでいた。
腹を触り、赤ちゃんの足かなと思われる部分を押すと蹴り返して来る。蹴ったわね〜このぉ〜と思いぐるぐる撫でると、うにょうにょ動く。

赤ちゃんの手や足、頭もなんとなくわかる。
もう完璧に人間の形になっているのだな〜、早く会いたいな〜と思った。
スゴ過ぎる!助産院でのビックリ話
助産院で出産までの流れの説明会に参加した時の助産婦さんの話。


助産院では、ダンナ様の立会いはもちろん家族も、親族も、友人も、知人も誰でも立会いOKなのだそう。
助産婦さんの話で、今までで一番多かったのは親族や友人ら11人を立ち会わせて出産をした妊婦がいたという。
私はとてもじゃないが、ダンナ様以外は親でもちょっと遠慮願いたい。

でも、夫以外に立ち会う人を呼んで、出産に時間がかかってしまうと妊婦は気を遣ってしまい、焦って出産に集中できないということもあるので呼ぶ人は考えた方がいい。



胎盤を食べる。
これは病院でも行っているところがあるらしい。

出産後、出てきた胎盤を包丁で切り、頂く。
ワサビ醤油をつけて食べるとなかなか美味しいという。
地方によっては、胎盤料理を親戚や近所の人たちに振る舞うところもあると聞いた。

食べてみたいような・・食べたくないような・・。



一生に何度もある出産ではないと言って、羊水を飲んだダンナさんがいたという。
破水がおこるまで、ずっとコップを持って待っていたそうだ。
破水がおきた時、急いでコップで受け止めて飲んでいたそう。味はちょっとしょっぱいらしい。
ひ〜。



陣痛があるものの子宮口が開かず、1週間、助産院で陣痛を耐えて出産した妊婦さんがいたという。
病院だったら間違いなく陣痛促進剤や子宮口を柔らかくする薬を投与して、出産を促していたのだろうが、助産院は医療機関ではないのでそういった処置は出来ない。

助産婦さんは病院への搬送を勧めたらしいが、妊婦さんがどうしても助産院で産みたいといって耐えていたそうだ。

私は、1日でも大変で辛かったのに・・すごい人もいるもんだ。



なかなか、陣痛がおきず、出産予定日を大幅に遅れた妊婦が、陣痛を促すために真冬の雪山(といっても高尾山くらいだと思うけど)に登山した妊婦がいたという。
次の日、めでたく出産したらしいが。あんな大きなお腹を抱えて、なんとパワフルな妊婦なのか。


まだまだたくさん話を聞いたけど、ちょっと忘れてしまいました。ごめんなさい。
出産の恐怖にとりつかれた日々
妊娠も10ヵ月間近になり、とうとう出産までのカウントダウンが始まった。

お腹はボーリングの球を隠し持っているかのようにデカイ。
腰は痛いし、立ち上がるのも何かにつかまってじゃないとなかなか立ち上がれない。

夜は、苦しくて何度も目が覚める。早く、産んで楽にはなりたいのだけど、出産の痛みを想像すると怖くて怖くて仕方がない。

会社を退社したので、昼間はほとんど家の中に居たが、一人きりになると出産のことばかり考えてしまう。

「どのくらいの痛みなんだろう、怖い・・」。

夕暮れになると、電気も付けずに怖くてシクシクと泣いていた。
マタニティブルーもあったのか、何をしても泣けてくる。そして、切ない。

助産院へ通うバスから見える景色も、家の窓から見える景色も、ウォーキングをしながら見る景色たちも切なくてため息が出る。

もしかして、一人の時に陣痛が起きたら一人で助産院へ向かわなくてはならない。
行けるだろうか・・。
痛くて歩けなかったらどうしよう・・。怖い、怖い、怖い・・・。

この頃の娯楽といったら、夜、ダンナ様とバラエティ番組を一緒に観るくらいだった。

バラエティ番組を見て笑うけど、心から笑っていない。
何かが引っ掛かっていて楽しめない。

『案ずるより産むが易し』と言うが、案じれずにはいられない。
やっぱり無痛分娩にすべきだったかな、今から変えられないだろうかとまで思ってしまう。

助産院で観た出産のビデオ映像が頭に浮かぶ。
悲鳴に近い声を発しながら出産をする妊婦の映像があった。
あんな声を出す時なんてそうそうない。そんな声が出る痛みって、とてもすごいのだろう。

初産は子宮口が開くまで時間がかかるらしく、何時間も陣痛を耐えなければならない。本当に耐えられるのだろうか。

2ヵ月後には、出産も終え、赤ちゃんはもう生まれていて、大変だけど幸せな日々になっているだろう。
飛び越えて2ヵ月後になりたい。

毎日、毎日、こんなことを思いながら過ごしていた。
陣痛が来ない〜〜!!
あまりにも出産を恐れていたせいか、出産予定日が来ても陣痛がこない。

夜中には前駆陣痛といって、軽い陣痛みたいなものが来るがすぐに治まってしまう。

でも、出産予定日というのはだいたいの目安でみんな1週間くらい前後するらしいので、あまり切羽詰ってはいなかった。

「だいたい初産は予定日より遅れるものよ」と周りから散々聞いていたので、安心していた。

出産予定日を1週間過ぎた。

まだ陣痛が来ない。どんどん日にちが経つにつれ、不安になってくる。
助産婦さんが、「予定日を2週間遅れるようなら病院での出産になってしまうんです。胎盤も老化し始めちゃうし。病院で陣痛促進剤を打って出産をするカタチになります」と言っていた。

あと、3日で予定日から2週間経ってしまう・・・。
やっとの思いで助産院という産み場所を見つけたのに、病院へ送られてしまうなんて。

一生懸命にお腹に話しかける。「もう出てきていいんだよ〜。出ておいで〜」

・・・なんの変化もなし。

助産婦さんに勧められて病院で検査を受けることになった。
赤ちゃんの様子や子宮口の開き具合を診るらしい。

診察台の上に乗り先生に診てもらう。先生は、「ちょっと陣痛を起こすおまじないをしますよ〜」と言った。

おまじない?なんだろう?と思った瞬間、心の中で『イデデデデ〜』と叫んだ。たぶん、先生が指で子宮口をこじ開けたのだろう。鮮烈な痛みが走った。

「今日明日には陣痛が来ると思うよ」と先生は言った。

本当かな〜。まだズキズキと痛みがある。ちょっと出血もしていた。
私は、ガニ股になりながらフラフラと病院を後にした。
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